写植とは漫画の吹き出し内に入れる文字のこと

「写植」とは、現在の主流であるデジタルによるDTPが普及する前に、商業印刷で使われていた文字印刷の方法です。
 当時は漫画制作の現場でも、写植文字が印字された紙をアナログ原稿の漫画の吹き出しに合わせて切り貼りする「文字入れ」という作業がありました。
 その流れから、ほぼ全ての工程がデジタル化した現代でも、漫画の台詞文字入れは今も漫画業界の一部で「写植」と呼ばれ続けています。

広告漫画におけるデジタル写植

 他の商業漫画家同様、広告漫画家の多くは制作にCLIP STUDIOという漫画制作専用ソフトを使っています。
 このソフトには漫画制作に必要な機能が全て揃っており、もちろん台詞の文字入れも可能です。

 漢字がゴシック体、ひらがな・カタカナが明朝体で表示される漫画特有のフォントはもちろん、キャラクターの感情に合わせて様々なフォントが選べるため、このソフトひとつでデジタル写植まで行った原稿を完成させることができます。

 ただし、完成した作品は絵も文字もまとめて画像データとして書き出されますので、漫画内の文字をクライアント側で打ち直して修正することはできません。

 また画像データは「ピクセル(画像の点)」の情報でできているという特徴があるのですが、拡大するとそのピクセルが大きく粗く見えてきます。
 と言ってもインターネット上の漫画を何倍にも拡大して読むことは通常ありませんし、印刷物になってしまえばそもそも拡大することもできませんので、普通に読む分にはさして気にならない程度かとは思います。

印刷物のクオリティを上げるIllustratorによるデジタル写植

 しかし百漫画では、印刷物になる漫画作品の写植は、最終的に全てIllustratorで行なっております。
 CLIP STUDIOから漫画の画像データ(吹き出しの中身は空っぽ)を書き出し、そのデータをIllustratorに読み込んだ上で、全ての台詞を改めて打ち込んでいるのです。

 ピクセルでできた画像データ(ラスターデータ)に対して、Illustratorで制作されるデータは「線」の情報でできています(ベクターデータ)。
 その特徴は、拡大・縮小しても粗くなることがなく、滑らかさが維持されることにあります。

 漫画や写真には、表現力やファイルサイズの違いからラスターデータの方が適しているのですが、文字に関してはベクターデータの方がより美しく、より読みやすく印刷されます。
 画像データの文字でもストレス無く読めることは先ほど申し上げたとおりですが、見比べるとその差は一目瞭然です。

↑ クリスタから書き出した写植
↑ Illustratorで打ち直した写植

 また漫画が印刷物になる場合は、パンフレットやチラシなど、大抵デザインとセットで完成することになると思います。
 そしてデザインはIllustratorで行われるため、漫画以外の文字はほぼベクターデータです。
 同じ印刷物の中で、デザイン側の文字と漫画内の写植でクオリティに差があることは、制作物そのもののクオリティに関わってきます。

 ですので、百漫画では二度手間にはなりますが、印刷を行う可能性のある漫画は全てIllustratorによるデジタル写植を基本料金内で行なっている次第です。

 漫画を使った印刷物のクオリティにこだわりたい方は、ぜひデジタル写植をIllustratorで行なっている百漫画にご相談くださいね。