大河ドラマ誘致プロジェクトの一端を担う施作に込められた思い
石川県は金沢市と隣接し、加賀と能登の間にある津幡町。
この町では10年以上前から全国各地の関連地域と共に、平安時代の源氏の武将 木曽義仲(きそよしなか)とその仲間巴御前(ともえごぜん)らをモチーフにしたNHK大河ドラマの誘致を推進しており、その事業の一環として漫画の制作を立案しました。
その制作者として同町出身の私に白羽の矢が立ち、作画はもちろんストーリー提案や冊子の構成から全て担当させていただきました。
町民にこそ知って欲しい義仲の軌跡
依頼のメールには、以下のような文が綴られていました。
「大河ドラマ誘致推進活動の重要な企画の一つと位置付けておりますが、なにより町民の皆様に郷土の歴史を広く知っていただくためにわかりやすく漫画化し、町内の小中学生にも配布し読んでいただきたいと考えています」
津幡町には義仲が火牛の計という戦法を用いて平家軍を破ったと言われている倶利伽羅という地があります。
その場所やエピソード自体は皆知っているのですが、義仲がどういう人物で、なぜその地で戦ったのかまではよくわからないという人がほとんど。
大河ドラマ誘致のツールであると同時に、町民にこそ義仲を知って欲しいという思いが担当の方にはありました。
自分が理解していないことは読者にも伝わらない
依頼があってからの最初の数ヶ月は、町から提供された資料はもちろん自分でも図書館で本を借りるなどして、義仲や当時の時代背景の知識の習得に費やしました。
私の漫画の作り方の特徴として、テーマとなることをまずは徹底的に自分で学ぶという点があります。
例えば企業さんからの広告漫画の案件であればホームページを隅々拝見しますし、個人事業の方がブランディングで漫画を利用したいという場合はその方のSNSやブログを読み込みます。
自分でよく理解していなことを体裁だけ整えて漫画にしても、読者には伝わらないと思うからです。
(なのでひと案件終わる頃には、いつもちょっとした「その方面に詳しい人」ができあがります…!)
義仲の生涯について一通り学んだところで、私の頭には「義仲とその仲間たちの生涯を漫画に」という元の依頼とは別のストーリーが浮かんでいました。
津幡の子どもたちと義仲たちのエピソードがクロスするストーリー
義仲の生涯を短編漫画にまとめてしまうのはもったいないし、漫画を通して町の方々に「自分たちの地元で活躍した人物」という愛着のようなものを感じて欲しい。
そう考えた私は、義仲や巴たちの物語としてはダイジェストと言いますか、おいしいところをハイライトで見せることにして、主人公を津幡の子どもたちにすることにしました。
子どもたちの間で起こる問題と義仲のエピソードが交互に展開するネームを見て担当の方はさぞ驚いたことだろうと思いますが、ありがたく受け入れていただきストーリーが完成した次第です。
ちなみに『ぼくらの義仲物語』というタイトルも私の案を採用していただきました。
これも遠い昔の人物というふわっとした存在を、私たちの今と繋げることで、ぜひ義仲を身近に感じて欲しいという思いを込めています。
お客様の声
「津幡町の子どもたちにも町の歴史を知ってほしいという思いから、漫画にすることで親しんで読んでもらえるのではないかと考え、「ぼくらの義仲物語」を製作することとなり、津幡町出身の漫画家である百万さんに依頼しました。
しかしながら、漫画を創り上げることがこんなに大変な作業になるとは思いませんでした。
百万さんにはストーリー作りから資料編、そして表紙まであらゆることにお世話になりました。
そして、出来上がったこの漫画冊子は正に津幡町の大河ドラマ誘致の『魂の一冊』になりました。
今では子どもだけでなく、県外の木曽義仲ファンからも問い合わせがあるほどで、当町の大河ドラマ誘致推進の切り札として活用されています。」
制作物詳細 | 大河ドラマ誘致推進漫画作品『ぼくらの義仲物語』/A5/フルカラー/48P |
制作時期 | 2018年8月 |
クライアント | 津幡町 産業建設部交流経済課 様 |
『ぼくらの義仲物語』実績紹介はこちら
http://hyakumanga.com/work/yoshinaka/