修正・リメイクに対応するデジタルならではの漫画作り

(すっごく単純にした)レイヤーの構造

百漫画では漫画の制作を全てデジタル環境で行っているのですが、その際データを上の図の様に背景、キャラクター、そしてセリフをバラバラのレイヤー(層)にして作ります。
こうすることで、修正や別媒体用にリメイクすることが容易になるためです。

要素ごとにをレイヤーを分けるメリット

元のコマ

例えばこのサンプルの1コマ、キャラクターの耳や後頭部は「外国人!」という吹き出しの下に隠れています。
絵を描き込んでも見えない部分ですから、普通の漫画ですと作画を省略しても不思議ではありません。
しかしそこをあえて描いておくことで、大きなリスクヘッジになるんです。

例えばこのコマを見たお客さんが、「やっぱり外国人!ってセリフいらないなあ」と思い修正することになったとします。

もし吹き出しの下に絵を描いていなければ、セリフを消して、その分を描き足さなくてはいけないんですね。
色も塗って完成している絵に付け足して描くのは、容易な作業ではありません。

しかし最初から描いてあれば、吹き出しのレイヤーを外すだけです。

最初のセリフだけ削除

修正内容に応じて柔軟に調整

また別のパターンで、お客さんから「外国人!だけだとインパクトが弱いから、本物の外国人!にしてもらえませんか?」と修正指示があったとしましょう。

ネーム(本制作に入る前の漫画のラフ)の段階で言っていただきたいというのが本音ですがそれは一旦置いといて、お客さんの言うとおりにとりあえずセリフと吹き出しを修正してみると…

最初のセリフを修正

セリフが2行になり、それに伴い吹き出しのサイズも大きくなって、キャラクターの顔が隠れてしまいました。
ここでもし背景もキャラクターもこのコマに一緒に描き込んでしまっていたら、今度は描き足しどころか最初から描き直すことになるかも知れません。

しかし最初にご説明したとおり全て別々に描かれているので、キャラクターや背景、残りの吹き出しの位置を調整して修正することができるのです。

セリフ修正に合わせてキャラクター位置を調整

広告業界で身についた「修正はあると思え」の心構え

商業誌の漫画でも修正や描き直しをすることはありますが、それは制作する側の都合であってどの程度直すかはこちらのさじ加減です。

それに対し依頼されて制作する漫画の場合は「お客さんが」気になるところを直す必要があるため、どの段階でどこに修正が入っても対応できるようにしておく必要があると思っています。

PCで作画しているからと言って1クリックで簡単に修正ができるわけではありませんが、このような方法が取れるのはデジタル作画ならではのメリットですね。
引き続き様々な修正、展開を見越した作品作りを行っていきたいと思います。

こんな活用方法も

あとオマケ的な要素ですが、このやり方ですと漫画として描いた絵をイラスト素材として利用することもできます。
例えば「この叫んでるキャラの絵だけ欲しい」と言われれば、キャラクターの描かれたレイヤーだけを抜き出してお渡しすることもできますよ!

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